シリーズ~お墓は誰が継ぐ? その4

昨日あたりからようやく青空も見え始め、気温も連日30度を超え、夏らしくなってきました。

関東の梅雨明けは、この週末ぐらいでしょうか。

どうやら今年は、梅雨明け後は一気に真夏日が続くらしいとのこと、いやはや何とも気候の谷間ですね。

さて、当サイト「お墓は誰が継ぐ?」シリーズですが、本稿で4回目となります。

我が国では、信仰、宗教の自由は日本国憲法によって認められています。

と言って、すべての宗教、教えが完璧にただしいかというと、そんなことはありません。

極端な例では、13人の死刑囚を生んだ宗教集団もあります。

信じた者が救われるというか、盲信した者の言うことは、時に信じていない者側から見ると「なんだそれは?」と思うことも多いです。

今回は、そんなお話です。

その家から嫁に出て40年ほど経った娘から、お墓を守っている総領あてに連絡がありました。

「お墓に、死産で亡くなった姉の名前を刻んでほしい」というものでした。

この家は女系で、娘が5人いました。

今回、実家の総領あてに連絡をよこしてきたのは、4女です。

昭和19年から22年の間に、本当は3女にあたる子どもが臨月までお腹に入っていて死産しました。

終戦前後の混乱からか、母親は子を失った時期をまったくおぼえておらず、すでにその母親も鬼籍に入っておりました。

連絡をしてきた4女が指定してきた姉の名前は「みつこ」でした。

でも、まだ小さかった長女と次女は、亡くなった3女の名前を確りと記憶しており「よしこ」だと言いました。

困り果てた総領は、菩提寺の住職へ相談に行きました。

お寺の過去帳には死産した叔母の記録はなく、住職も「先祖代々で供養をちゃんとしているから、大丈夫ですよ」と総領に説明をしてくださったそうです。

却ってそれを4女に告げたところ、「実は今、私の息子が離婚の危機にある。その原因になってるのは、姉(3女)をちゃんと供養していないからだ。私を助けると思って、お寺から戒名をもらってお墓に刻印して欲しい」と4女は頑として聞き入れてくれなかったそうです。

さらに聞けば、それは、何処かの拝み屋さんで言われたことで、長姉たちが覚えている「よしこ」ではだめで、絶対「みつこ」にしろ、と言われた、というのです。

加えて実際は、戒名をいただくのも墓標に刻むのにも、そこそこの費用が掛かります。

しかし、4女は、「そうしたことを行うのは実家の務め。だから私は1万円しか出しません」と言うのです。

再度、総領と4女そして菩提寺と話し合った結果、いったんは、「よしこ」という名であれば何とか総領の裁量でご供養を行う、ということになりかけたそうです。

そもそも、お寺さんと拝み屋では、信仰の成り立ちも方向付けも根本から異なるのですが、なんと言っても血を分けた兄妹ででもあり、4女の気持ちを汲み取り、今回は何とか上手く調和させたい、というのが総領の意向でありました。

しかし話し合いの終盤、それほどまでに気に病み、どうしても「みつこ」という名前で弔いたいのなら、4女自身が個人でお墓を建てるべき、とその場で丁寧に伝えたそうです。

そもそもが、誰に言われるまでもなく日頃から総領はキチンとお墓を守っていたのです。

ところが、こともあろうに4女は「そんなこと言うなら、お寺にもお前の家にも祟りが起こるから!」と捨て台詞を残し、その話し合いの場から退席してしまったそうです。

程なくして、残念なことに4女は実家と絶縁してしまったとのことでした。

お墓を守る、ということは時に、その家から出た者、嫁いだ者から、わけのわからない信仰や言い掛かりめいた事までも、ぶつけられるのです。

傍目以上に本当に気苦労が多く、大変なものなのです。

総領の心構えとしては、そうしたことに惑わされないよう常日頃から心身ともに健康に努め、どんな時でも平常心を保てるように準備をしておきたいものです。

なかでも、菩提寺とは何でも相談し合える仲でありたいものですね。

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